「作物のサプリメント」バイオスティミュラントとドローンが未来の農業を支える

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1. バイオスティミュラント(BS資材)とは?

バイオスティミュラント(Biostimulants、BS資材)とは、作物の生理機能を活性化し、成長促進やストレス耐性向上をサポートする資材のことです。

農薬のように病害虫を防除するわけでもなく、肥料のように直接栄養を供給するわけでもありません。
むしろ、作物が持つ本来の力を引き出し、成長を助ける「サポート役」のような存在です。

分かりやすく例えると?

バイオスティミュラントは、作物にとっての「サプリメント」や「トレーナー」のようなものです。

人間がビタミンやミネラルを摂ることで、健康維持や免疫力向上を図るのと同じように、作物もバイオスティミュラントを活用することで成長が促進され、環境ストレス(暑さ・乾燥・塩害など)に強くなります。

またある時はトレーニングを通じて筋力を強化し、試合で最高のパフォーマンスを発揮できるように、作物もバイオスティミュラントを使うことで、本来の成長力を最大限に引き出すことができます。

2. バイオスティミュラント(BS資材)は何からできているのか?

バイオスティミュラント(以下、BS資材)は、作物の成長を助け、ストレス耐性を向上させるために使われる農業資材ですが、「そもそもBS資材は何から作られているのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

バイオスティミュラント(BS資材)は、自然界に生息する微生物や植物由来の成分を活用した農業資材です。化学肥料や農薬のように人工的に合成されたものではなく、土壌、空気、海洋など、もともと自然界に存在する有益な成分を活かして作られているのが特徴です。主に、以下のような成分が使われています。

1. 微生物系BS資材(バクテリア・菌類など)

🔹 主な原料:微生物(菌根菌、エンドファイト菌、窒素固定菌 など)

🌱 微生物が生息している場所
✔ 森林や草原の土壌
✔ 自然界の植物の根や茎の内部
✔ 健全な土壌の中(有機物が豊富な場所)

微生物系のBS資材は、特定の有益な菌類やバクテリアを利用し、作物と共生することで、成長や養分吸収をサポートするタイプです。

✅ 代表例:マイコス(バイオシード)

2. 有機酸系BS資材(フルボ酸・フミン酸など)

🔹 主な原料:フルボ酸、フミン酸、アミノ酸 など

🌿 有機酸が生息している場所
✔ 落ち葉や枯れた植物が積もった腐植土(森の土壌)
✔ 湿地や湖の底(有機物が多く含まれる)
✔ 畑の土壌(特に有機栽培を行っている土壌)
✔ 植物の残渣

有機酸系のBS資材は、土壌中の微生物を活性化し、養分の吸収効率を高める働きがあります。また、根の成長を促す効果も期待できます。

✅ 代表例:X-RCS(アサヒバイオサイクル)

3. 窒素固定菌系BS資材(空気中の窒素を利用する菌)

🔹 主な原料:窒素固定菌(Methylobacterium symbioticum など)

🌬 窒素固定菌が生息している場所
✔ 空気中(大気中に浮遊している)
✔ 作物の葉の表面(特に湿気が多い環境)
✔ 湿った土壌や水田

窒素固定菌系のBS資材は、空気中の窒素を取り込んで作物に供給することで、肥料の使用量を削減できるタイプです。

✅ 代表例:ユートリシャN(コルテバ)

3. なぜバイオスティミュラント(BS資材)が日本で注目されているのか

近年、バイオスティミュラント(BS資材)が日本で注目されています。その背景には、環境問題や農業の持続可能性に関する課題などさまざまな要因があります。
ここでは、なぜBS資材が重要視されているのかをわかりやすくまとめます。

1. 肥料や農薬の使用を減らし、コストを抑えたい

ここ数年、化学肥料の価格が大幅に上昇しています。その理由は、肥料の主成分であるリン・窒素・カリウムといった原料の供給が不安定になっているためです。特に、日本はこれらの資源を海外に依存しているため、国際情勢の変化によって価格が大きく左右されます。

そのため、多くの農家が「できるだけ肥料の使用量を減らしたい」と考えるようになりました。そこで役立つのがBS資材です。BS資材を使用することで、作物の養分吸収効率が上がり、少ない肥料でもしっかりと成長できるようになります。

また、農薬の使用量を減らしたいというニーズも高まっています。消費者の間では、「農薬をなるべく使わずに育てた野菜や果物を食べたい」という声が増えており、スーパーなどでも「減農薬」や「無農薬」の商品が人気を集めています。BS資材は、作物の免疫力を高め、病害に強くする効果があるため、農薬の使用量を減らすことにもつながります。

ニンジャリンクス調べ

2. 気候変動による影響を受けにくい作物を育てたい

ここ数年、気候変動の影響により、日本の農業は大きな影響を受けています。特に、夏の高温や異常気象が問題となっており、猛暑による収量減少や、大雨・干ばつによる被害が深刻化しています。

例えば、猛暑が続くと作物の光合成が正常に行われず、葉が焼けたり、実が小さくなったりすることがあります。また、干ばつによって土壌の水分が不足し、作物が枯れてしまうこともあります。一方で、大雨が続くと根が酸欠状態になり、病害が発生しやすくなるなどの問題も起こります。

このような環境ストレスに対して、BS資材を活用することで作物の耐性を向上させることができます。例えば、海藻エキスを主成分とするBS資材は、乾燥や高温、塩害といったストレスに強い作物を育てるのに役立ちます。また、植物ホルモンを活性化させるBS資材を使うことで、作物の免疫力を高め、病害に強い状態を作ることができます

赤字=平均気温(℃)  青字=作物の被害額(100万円)

3. 作業を楽にして、もっと効率よく農業をしたい

日本の農業の大きな課題の一つが人手不足と高齢化です。現在、日本の農業従事者の平均年齢は67歳を超えており、労働力が不足している農家が増えています。そのため、できるだけ作業を省力化し、効率的に農業を行うことが求められています。

BS資材は、ドローン散布との相性が非常に良く、短時間で広範囲にムラなく施用できるというメリットがあります。特に、葉面散布に適したBS資材は、ドローンを活用することで効率的に作物に吸収させることができます。

また、発芽を促進するBS資材を使うことで、育苗の手間を減らしたり、苗の生育を均一にすることができるため、定植作業の負担を軽減することも可能です。


4. バイオスティミュラントにはどんな働きがあるの?

バイオスティミュラントには、主に以下のような機能があります。

1. 作物の免疫力を高め、病害に強くする(マイコス)

農業では、病害の発生を防ぐことが非常に重要です。しかし、病気のたびに農薬を散布するのはコストがかかるうえに、使用回数を減らしたいという農家の声も多くなっています。そこで注目されているのが、作物自体の免疫力を高め、病害に強い状態を作るBS資材です。

その代表的な資材が、マイコス(バイオシード)です。マイコスは、エンドファイト菌という特殊な微生物を活用したBS資材で、以下のような効果があります。

✅ マイコスの働き

  • 作物の免疫力を高め、病害の発生を抑える
  • 根の周りに共生し、栄養吸収をサポートする
  • 作物の成長を促し、ストレス耐性を向上させる

エンドファイト菌は、作物の中に共生し、病害菌の侵入を防ぐバリアのような働きをします。さらに、根の周りで微生物が活性化することで、土壌中の養分が吸収されやすくなり、作物の成長を助けます。

🦠 こんなときにおすすめ!
✔ 農薬の使用量を減らしたい
✔ 病害に強い作物を育てたい
✔ 作物の根張りを良くし、養分吸収を改善したい

2. 空気中の窒素を活用し、肥料の使用量を減らす(ユートリシャN)

化学肥料の価格が高騰する中、「できるだけ肥料を節約しながら、しっかり作物を育てたい」という農家の声が増えています。特に、窒素肥料は作物の成長に欠かせない要素ですが、コストがかかるため使用量を抑えたいというニーズが高まっています。

そこで注目されているのが、ユートリシャN(コルテバ)です。ユートレッシャーNは、空気中の窒素を作物に供給できる画期的なBS資材です。

ユートリシャNの働き

  • 空気中の窒素を作物に吸収させ、肥料の使用量を減らす
  • 葉面吸収型で、ドローン散布に適している
  • 窒素吸収のスピードが速く、即効性がある

ユートリシャNには、Methylobacterium symbioticum(窒素固定菌)が含まれており、この微生物が作物の葉に定着することで、空気中の窒素を作物に供給できるようになります。そのため、通常の窒素肥料と組み合わせることで、少ない肥料でも作物をしっかり育てることが可能になります。

🌾 こんなときにおすすめ!
✔ 窒素肥料のコストを抑えたい
✔ 環境に配慮し、肥料の使用量を減らしたい
✔ ドローンを活用し、効率よく肥料を施用したい

ユートリシャN公式サイト (コルテバ)
https://www.corteva.jp/products-and-solutions/biostimulant/utrisha-n.html

3. 土壌と根の環境を整え、養分吸収を助ける(X-RCS)

作物が健全に成長するためには、根がしっかりと土に張り、栄養をスムーズに吸収できる環境を作ることが大切です。しかし、土壌が固くなっていたり、肥料の吸収がうまくいかなかったりすると、作物の成長が遅れたり、養分不足で病害に弱くなったりすることがあります。

ここで役立つのが、クロスRCS(アサヒバイオサイクル)です。クロスRCSは、特定の微生物群と有機酸を組み合わせたBS資材で、以下のような働きをします。

✅ X-RCSの働き

  • 根の成長を促進し、しっかりと根付かせる
  • 土壌環境を改善し、養分の吸収効率を高める
  • 発芽率を向上させ、作物の初期成長を安定させる

特に、クロスRCSは発芽促進効果が高く、種まきや苗の定植時に使用すると、作物の生育が揃いやすくなります。発芽が遅れると、生育のばらつきが出たり、収穫時期がズレたりする原因になりますが、クロスRCSを使うことでこうした問題を軽減できます。

🌱 こんなときにおすすめ!
✔ 種の発芽を早めたい・発芽率を上げたい
✔ 作物の根張りを良くし、収量を安定させたい
✔ 肥料の吸収を良くして、効率よく作物を育てたい



3. キレート効果で肥料の効率化を最大限発揮!(HS-2プロ)

農業において、肥料を使用しても効果が感じられることはありませんか?
肥料代が年々上がっているのに、コストに見合った効果が得られていないこともしばしばあります。

ここで役立つのが、HS-2プロです。HS-2は、純国産のBS資材フミン酸・フルボ酸を同時抽出した水溶液資材です。さらにpHが中性なので農薬、肥料との混合することが可能です。HS-2は以下のような働きをします。

✅ HS-2プロの働き

  • 根の成長を促進し、しっかりと根付かせる
  • 土壌の微生物環境を整え、養分の吸収効率を高める
  • 発芽率を向上させ、作物の初期成長を安定させる

特にフミン酸フルボ酸の両方が入っており、肥料の保持率を向上させることができます。それぞれ以下のような効果があります。

フミン酸: ①土壌中での肥料持ちが良くなる ➡  肥料の有効利用 
      ②毒物を捕まえ吸収させない ➡ 土壌微生物を活性化させる。

フルボ酸 ➡ ①葉面からの肥料吸収を速やかにさせる。
      ②栄養素の転流がスムーズになる。

🌱 こんなときにおすすめ!
肥料の吸収効率を上げ、コストを削減したい
作物の根張りを良くし、収量を安定させたい
✔ 植物本来の力を生み出し、農薬を減らしたい

HS-2プロ 公式HP(小西安農業資材株式会社)
https://konishiyasu-nz.com/pg4618019.html

5. バイオスティミュラントの主な種類と代表的な製品

種類主な成分・技術主な効果代表的な製品
微生物系エンドファイト菌
菌根菌
窒素固定菌
病害抵抗性向上
根の成長促進
窒素供給
マイコス
(バイオシード)
ユートリシャN
(コルテバ)
海藻エキス系フルボ酸
アルギン酸
ストレス耐性向上
発根促進
タスケルプ!
(サンビオティック)
有機酸系フミン酸
アミノ酸
養分吸収促進
品質向上
ユートリシャN
(コルテバ)
HS-2プロ
(小西安)
ミネラル系ケイ酸
カルシウム
耐病性向上
細胞壁強化
X-RCS
(アサヒバイオサイクル)

6. バイオスティミュラント×ドローン散布の相乗効果

近年、ドローン(DJI AGRAS T10・T25など)による精密散布が普及し、バイオスティミュラントの効果を最大限に引き出せるようになっています。

🔹 ドローン散布のメリット

  • 広範囲に均一に散布できる → バイオスティミュラントの効果を最大化
  • 短時間での作業が可能 → 労力・コスト削減
  • 葉面散布による即効性UP → 窒素固定菌などの葉面吸収型BS資材と相性抜群

特に「ユートリシャN」などの窒素固定型BS資材は、ドローン散布による葉面吸収が有効であり、今後の農業における重要な技術となるでしょう。


7. まとめ

バイオスティミュラントは、作物の成長を促進し、ストレス耐性を向上させる「サプリメント」のような存在です。

🔹 バイオスティミュラントのポイント
✅ 環境ストレス(乾燥・高温・塩害)への耐性UP
✅ 養分吸収効率を向上させ、肥料の利用効率を最大化
✅ 収量・品質の向上につながる

🔹 ドローン散布との相性
✅ 葉面散布型のBS資材は、ドローンによる効率的な散布が可能
作業時間の大幅削減均一な散布効果最大化

今後農水省のガイドライン策定により、BS資材の活用が広がることが期待されています。
持続可能な農業のために、バイオスティミュラントとドローン技術の活用をぜひ検討してみてください!

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