ドローンでの肥料散布にも役立つ! 稲作のNPKと施肥設計を理解しよう

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1. はじめに|NPKを理解せずに肥料を撒いていませんか?

「NPKって何?」と聞かれたら、パッと答えられますか?

実は、意外と知らずに使っている農家さんも多いんです。でも、肥料の成分をちゃんと理解しておかないと、知らず知らずのうちに「肥料の無駄遣い」や「収量ダウン」につながることも。

最近では,一発肥料が主流になっていますが、高温の影響で効き方が変わってきているのも事実。
そこで今、「追肥」や「分施(分けて施肥すること)」がまた注目されつつあります。

今回は、水稲の施肥の基本と、最近の肥料トレンドについて、分かりやすく解説していきます!

2. NPKとは? それぞれの役割と適正量

肥料の袋を見ると、「8-8-8」や「14-14-14」といった数字が並んでいますよね。
これは、それぞれ N(窒素)、P(リン酸)、K(カリウム) の割合を表しています。
「なんとなくバランスよく入っている肥料を撒いているけど、具体的に何に効くのかはよく知らない…」という方も多いと思います。
ここでは、それぞれの役割を詳しく説明しながら、「不足したらどうなるのか?多すぎたらどうなるのか?そして結局どのくらいがいいのか?」を解説していきます!

N(窒素)とは? → 葉や茎を育てる栄養素

窒素(N)は、植物の成長を促進し、葉や茎を大きくする役割を持っています。
稲がぐんぐん育つためには、欠かせない栄養素です。ちなみに、自然界では大気の約80%は窒素ガスですが、二酸化炭素と異なり、植物はこれを直接利用することはできません。大気の窒素を微生物などの働きで固定することで、植物が利用できる形態に変換されて循環します。

窒素が足りないと…?

  • 葉の色が薄くなり、黄化(黄色くなる現象)が起こる
  • 生育が悪くなり、穂の数が少なくなる
  • 収量が大幅に減少する

窒素が多すぎると…?

  • 葉が必要以上に茂りすぎてしまう
  • 稲が軟弱になり、倒伏(稲が倒れること)しやすくなる
  • 穂ばかり大きくなりすぎて、米の品質が落ちる(タンパク質が増えて食味が悪くなる)

🌱 結局どうすればいいの?
窒素は「足りないとダメ。でも多すぎてもダメ。」という、とてもバランスが大事な成分です。
水稲の場合、1反あたり窒素5kg~10kg程度が適量と言われています。(品種や地域によって異なる)


P(リン酸)とは? → 根を張らせ、花・実をつける栄養素

リン酸(P)は、根の成長を助け、稲の根張りを良くする成分です。また、細胞分裂に盛んな部位に含まれ、穂の形成を促し、収量の安定にも関わっています。自然界では、土壌中のリンはリン塩酸の形で存在していて、植物に吸収されます。その植物を捕食した動物の排泄物や残骸が、微生物によって分解され、土壌にリン酸が供給されます。

リン酸が足りないと…?

  • 根の発達が悪くなり、生育が遅れる
  • 穂の数が減り、収量が安定しない
  • 稲の耐寒性や病気への抵抗力が低下する

リン酸が多すぎると…?

  • 土壌中に蓄積されやすく、実は無駄になりやすい
  • 他の栄養素(特に亜鉛や鉄)の吸収を妨げることがある

🌱 結局どうすればいいの?
リン酸は「足りないと根張りが悪くなるけど、多すぎても意味がない」という特徴があります。
実際、リン酸は土壌中に残りやすいため、毎年大量に入れる必要はないことも。
基本的には、適量を入れつつ、土壌診断を活用して調整するのがベストです。


K(カリウム)とは? → 病気や乾燥に強くする栄養素

カリウム(K)は、稲を丈夫にし、病害虫や気温ストレス(高温・乾燥)に耐える力をつける役割を持っています。根の発育を促進して、「根肥」とも呼ばれます。

カリウムが足りないと…?

  • 葉の先が枯れる「カリ欠」が発生する
  • 病気や害虫に弱くなる
  • 稲が倒れやすくなる(倒伏しやすくなる)

カリウムが多すぎると…?

  • カルシウムやマグネシウムの吸収を邪魔してしまう
  • 必要以上に入れても、稲がそれほど吸収しないので無駄になる

🌱 結局どうすればいいの?
カリウムは、水稲の収穫量や品質に大きく影響する成分ですが、過剰に入れすぎると無駄になってしまうことも。適量を意識しながら、土壌に足りていない場合は追加するのがベストです。

まとめ

成分役割不足した場合多すぎた場合
N(窒素)葉や茎の成長を促す生育不良・黄化葉ばかり茂って稲が倒れやすくなる
P(リン酸)根の発達、花・実の成長を助ける根の張りが悪くなる肥料の吸収効率が悪くなる
K(カリウム)病害虫や乾燥への耐性をつける病気や倒伏が増えるカルシウムやマグネシウムの吸収を邪魔する

3. 肥料の種類|有機肥料・化成肥料・高濃度肥料の違いとは?

NPKの役割を理解したところで、実際にどの肥料を使えばいいのか? について見ていきましょう。

肥料には大きく分けて以下の3種類があります。

  1. 有機肥料(じっくり効く)
  2. 化成肥料(バランスよく効く)
  3. 高濃度肥料(少ない量で効率よく)

それぞれの特徴を詳しく解説していきます!


① 有機肥料|じっくり効いて土を育てる肥料

有機肥料は、動物のフン(鶏糞・牛糞)や植物由来(米ぬか・油かす)など、天然の成分を使った肥料です。
化成肥料と違い、土に撒いてもすぐに溶けるわけではなく、じっくり時間をかけて分解され、その過程で作物に吸収されていきます。 そのため、即効性はありませんが、長期間にわたって養分を供給できるのが特徴です。
また、有機肥料を使うことで土壌の微生物が活性化し、土の質を良くする効果も期待できます。
微生物が増えることで、ふかふかで栄養豊富な土になり、作物が健康に育つ環境を作ることができるのです。

「ただの肥料」ではなく、「土そのものを育てる肥料」とも言えるのが、有機肥料の大きな特徴です。

メリット

  • 土壌改良に役立つ(微生物が活性化し、良い土になる)
  • 肥料焼けのリスクが低い(ゆっくり効くため)
  • 持続的な効果がある(長期的な施肥が可能)

デメリット

  • 即効性がない(分解に時間がかかる)
  • 肥料の成分が低め(大量に撒かないといけない)
  • 臭いがあるものが多い(鶏糞や魚粉など)

🌱 どんなときに向いてる?

  • 「じっくり効かせたい」「土の状態を良くしたい」とき
  • 有機栽培・無農薬栽培を目指す場合

🌾 代表例:4-4-4の有機肥料(鶏糞・油かすなど)


化成肥料の特徴|バランスよく使いやすい一般的な肥料

化成肥料は、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)をバランスよく配合した肥料で、農業でもっとも一般的に使われています。
成分が均一に含まれているため、狙った養分を正確に供給しやすいのが大きな特徴です。
例えば、「8-8-8」の化成肥料であれば、NPKがそれぞれ8%ずつ含まれており、施肥量の計算もしやすくなります。
また、即効性があるため、撒いた後すぐに作物が養分を吸収しやすく、短期間で効果が出やすいのもメリットです。
「すぐに効かせたい」「バランスよく栄養を補給したい」という場合には、化成肥料が最適な選択肢となります。

メリット

  • 施肥量を計算しやすい(NPKの割合がはっきりしている)
  • 効果が早い(成分がすぐに溶けて吸収される)
  • コストが比較的安い(有機肥料より少ない量で済む)

デメリット

  • 土壌改良効果はほぼない(微生物の働きには影響なし)
  • 過剰施肥に注意が必要(適量を超えると肥料焼けのリスクあり)
  • 長期的な土づくりには向かない

🌱 どんなときに向いてる?

  • 「バランスよく効かせたい」「即効性がほしい」とき
  • 一般的な水稲栽培で使うならこれが基本

🌾 代表例:8-8-8、14-14-14の化成肥料


高濃度肥料の特徴|少ない量で効率よく施肥できる

高濃度肥料は、窒素やカリウムの成分が40%〜50%と非常に高い割合で含まれている肥料です。
通常の化成肥料に比べて成分が濃いため、少ない量で効率的に養分を供給できるのが最大の特徴です。
そのため、施肥作業の回数を減らしたり、大量に撒く必要がない分、労力を大幅に削減することができます。
特に、ドローン散布との相性が良く広い面積を短時間で施肥したい場合や、作業効率を上げたいときに最適な肥料です。
高濃度肥料を適切に活用することで、効率的な施肥を実現し、農作業の負担を軽減することができます。

メリット

  • 施肥量が少なくて済む(作業の負担を減らせる)
  • 散布が楽(ドローンや機械で均一に撒きやすい)
  • 即効性が高い(作物がすぐに吸収しやすい)

デメリット

  • 均一に撒かないと「肥料焼け」のリスクがある
  • コストが高め(成分が濃いため)
  • 作物によっては濃すぎることも(適量を超えると逆効果)

🌱 どんなときに向いてる?

  • 「作業を減らしたい」「ドローンや機械で効率よく撒きたい」とき
  • 大規模な農業・スマート農業に適している

🌾 代表例:40-0-0(窒素40%)、50-0-0(窒素50%)の高濃度肥

まとめ

肥料の種類効き方メリットデメリット代表例
有機肥料じっくり効く
(遅効性)
土を育てる・肥料焼けしにくい即効性がない・大量に必要鶏糞・油かす
(4-4-4など)
化成肥料バランスよく効く(中速〜即効性)使いやすい・効果が早い過剰施肥に注意・土壌改良効果なし8-8-8、14-14-14
高濃度肥料素早く効く
(即効性)
少量で済む・効率的肥料焼けリスク・コスト高40-0-0、50-0-0

どんな場合にどの肥料を使うべき?

土壌を改善しながらじっくり育てたい → 有機肥料
バランスよく効かせたい → 化成肥料
効率重視・ドローン散布を活用したい → 高濃度肥料


4. 肥料の袋の数字、ちゃんと読めてる?

肥料の袋には「8-8-8」や「14-14-14」などの数字が書いてあります。
この数字が示すのは、肥料1kgあたりに含まれる成分の割合です。

例えば、「8-8-8」の化成肥料(20kg入り)の場合

  • 窒素:8% → 20kg × 8% = 1.6kg
  • リン酸:8% → 20kg × 8% = 1.6kg
  • カリウム:8% → 20kg × 8% = 1.6kg

つまり、「8-8-8」の肥料を20kg撒くと、NPKをそれぞれ1.6kgずつ施肥できることになります。

5. 水稲に必要な窒素量と、実際の施肥計算

水稲には窒素5~10kgが必要!

一般的に、水稲には1反(10a)あたり窒素5〜10kgが必要とされています。(※品種や地域で異なる)

じゃあ、これを満たすために、具体的にどれくらいの肥料を撒けばいいのか?
代表的な肥料を使って計算してみましょう!

実際の施肥計算|窒素5kgを施肥するには?

肥料の種類成分割合(N-P-K)目標:窒素5kgを施肥するための必要量(1反あたり)
有機肥料(4-4-4)4%125kg (5kg ÷ 0.04)
一般化成肥料(8-8-8)8%62.5kg (5kg ÷ 0.08)
高濃度肥料(40-0-0)40%12.5kg (5kg ÷ 0.40)

6. 最近の施肥トレンド|一発肥料と高温の影響

かつての施肥方法
元肥+追肥が主流だった

昔の水稲栽培では、田植え前に「元肥」を入れ、その後の生育状況を見ながら適宜「追肥」を行うのが一般的でした。
この方法では、成長に合わせて必要な養分を補えるため、安定した収量が期待できました。
ただし、その分 追肥の手間がかかる ことが課題でした。特に広い田んぼを管理する場合、何度も追肥を行うのは大きな労力となり、作業の省力化が求められるようになってきました。

現在の主流
一発肥料の増加

そこで登場したのが、「一発肥料」と呼ばれる 被膜肥料(コーティングされた肥料) です。
これは、田植え時に一度だけ肥料を入れれば、コーティングが徐々に分解され、長期間にわたって肥料が効き続ける仕組みになっています。
つまり、後から追肥をしなくてもOK! という便利な施肥方法です。
このおかげで、作業の手間が減り、労力やコストを抑えられるため、多くの農家さんが採用するようになりました。

問題点
高温で一発肥料の溶けるスピードが速まる

ところが、ここ数年の異常気象による高温化が、この一発肥料の仕組みに影響を及ぼし始めています。
一発肥料は 「一定の期間でゆっくり溶ける」 ことを前提に作られていますが、気温が高すぎると、想定よりも早く溶けてしまう のです。 その結果…

生育後半に肥料が足りなくなる → 穂が十分に育たない
稲が軟弱になり、倒伏しやすくなる
収量が落ちる

本来は作業の省力化を目的に導入された一発肥料ですが、 気候変動の影響で計算通りにいかなくなってきている のが現状です。

今後の対策
一発肥料+追肥 or 分施へ

この問題を解決するために、再び「追肥」や「分施(施肥を分けること)」が注目されるようになってきました。

一発肥料に加えて、必要に応じて追肥をする
最初から分施設計を考え、計画的に施肥する

特に最近では、「一発肥料+追肥」を前提とした施肥設計をする農家も増えてきています。
例えば、最初にある程度の肥料を入れ、足りなくなる時期に追加で補う ことで、高温の影響を抑えつつ、肥料の効果を最大限に発揮させる方法です。


7. ドローンでの肥料散布はどう活かせる?

ここまで水稲の肥料設計の基本を学びましたが、じゃあドローンでの肥料散布にはどう活かせるのか?

ドローン散布する場合のメリット

高濃度肥料を少量で均一に撒ける
広い面積を短時間で散布できる
圃場ごとにピンポイントで追肥ができる

近年の施肥トレンドを考えると、「一発肥料+追肥」や「分施」の考え方はドローン散布と相性がいい!
特に高濃度肥料を扱う場合、ドローンの正確な散布技術が活かせるので、今後さらに注目されるでしょう。
また今後ドローン施肥の詳しい説明もしていきたいと思いますのでご期待ください!


8. まとめ|NPKを理解して、収量アップを目指そう!

  • NPKの意味をしっかり理解することが、効率的な施肥につながる!
  • 水稲には窒素5kgが必要。肥料ごとの施肥量を計算しよう!
  • ドローン散布は、高濃度肥料の均一施肥や追肥に最適!
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