農業の継承と農地の貸借問題——これから直面するリアルな課題

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これからの日本の農業において、農地をどう維持し、誰が耕していくのかという問題は避けて通れません。特に、次のような状況が今後ますます増えていくでしょう。

1. 高齢化で農業を続けられない人が増える

「もう身体がしんどいけど、農地をどうしたらいいかわからない」「子どもは都会に出てしまって、跡を継ぐ人がいない」。
そんな声が全国で聞こえ始めています。特に地方では、70代・80代まで農業を続ける人が珍しくなくなってきました。でも、いつかは限界がきます。

  • 「農地を手放したいが、売るわけにはいかない」 → でも、農地は簡単に売れない。
  • 「管理できなくても固定資産税は払わなければならない」 → だから放置される農地が増える。
  • 「貸したいが、どう貸せばいいのかわからない」 → 農地を貸すにもルールがある。

結果として、耕作放棄地が増えるという悪循環に陥るわけです。

2. 「ウチの田んぼもやってくれ」と言われる人が増える

一方で、「農地を貸してほしい」「ウチの田んぼもやってくれないか」と頼まれる農業者も増えています。

  • 「隣の田んぼのじいちゃんが農業を辞めるから、やってくれって言われた」
  • 「親が農業を辞めるから、何とか農地を活用したい」
  • 「スマート農業で規模拡大したいが、農地を確保するのが難しい」

ただ、農地を借りるにも手続きがあり、適当にやるとトラブルになります。特に法人が借りる場合は、農地法の壁が立ちはだかります。


そもそも、なぜ農地法が必要なのか?

農地法は、「農地を自由に売買・転用させないための法律」ではなく、「農業を守るための仕組み」です。

1. 農地を守る(宅地化・転売を防ぐ)

もし農地法がなければ、投資目的の企業や不動産業者が農地を買い占め、農業をやりたい人が農地を確保できなくなります。特に都市近郊では、農地が宅地に変わり、農業が成り立たなくなる可能性があります。

2. 農業の担い手を守る(農業従事者に優先的に農地を使わせる)

農地が自由に売買できると、資本力のある企業が農地を独占し、小規模な農家は農地を確保できなくなります。そこで、農地法では、「農業をきちんと続けられる人だけが農地を借りたり買ったりできる」というルールを作り、農業者が農地を使いやすいようにしています

3. 耕作放棄地を防ぐ(農地を適切に使わせる)

農地を放置すると、雑草や害虫の発生源となり、周囲の農地にも悪影響を及ぼします。農地法は、農地を適切に貸し出せる仕組みを作ることで、放棄される農地を減らす役割も担っています

4. 無秩序な土地利用を防ぐ(食料生産の基盤を守る)

農地は、食料生産の基盤です。自由に転用できるようになると、農地が減り、日本の食料自給率も低下します。そのため、農地法では農地の転用を厳しく制限し、食料生産を維持する仕組みになっています。


農地を借りる・受託する際に知っておくべき農地法のポイント

1. 農地法第3条(農地を借りる場合)

農地を耕作目的で借りるなら、農地法第3条が適用されます。

  • 農地の貸し借りには、農業委員会の許可が必要
  • 借りる人(法人・個人)は、農業を適切に行う能力があることが求められる
  • 法人の場合、「農地所有適格法人(旧:農業生産法人)」でなければならない
    • 役員の過半数が農業従事者であること
    • 事業の中心が農業であること(売上の50%以上)

要するに、「農業に本気で取り組む人・法人でなければ農地を借りられない」という仕組みになっています。

また、農業委員会の審査では、「借りた農地を本当に活用できるのか?」という点もチェックされます。例えば、既に耕作している農地が荒れていると、「これ以上農地を借りても管理できないのでは?」と判断され、許可が下りにくくなります。

2. 農地法第5条(農地転用する場合)

一方で、農地を農地以外の用途に使う場合(例:スマート農業用の施設設置など)は、農地法第5条の許可が必要になります。

  • 農地を転用する場合、都道府県知事または農林水産大臣の許可が必要
  • 農業法人や自治体などが対象となるが、許可が下りる条件が厳しい
  • 農業振興地域の農地は、転用がほぼ不可能

例えば、「農作業の効率化のために倉庫を建てたい」「スマート農業の設備を設置したい」といった場合、農地転用許可を取らないと違法になってしまうので注意が必要です。

農地を借りるための手続きの流れ

農地を借りるための流れは以下のようになります。

  1. 農地を探す(農地バンク・農業委員会・知人経由)
  2. 農業委員会へ「農地法第3条許可申請」を提出(審査期間1~2ヶ月)
  3. 農業委員会の審査・許可(営農計画の確認あり)
  4. 貸主と賃貸借契約 or 利用権設定契約を締結
  5. 農業経営を開始

法人の場合は、農地所有適格法人の条件を満たしているか事前確認が必要です。


まとめ:これから農地をどうするか?

これから、日本の農業は確実に「世代交代」と「規模拡大」の局面を迎えます。その中で、「農地をどう受け継ぐか」「どう貸し借りするか」が大きなテーマになります。

  • 農地法は、農業を守るために存在する
  • 「農地法第3条」で農業者・農業法人としての適格性が求められる
  • 「農地法第5条」で農地転用には厳しい制限がある
  • スマート農業や法人経営を考えるなら、事前に農業委員会と相談することが重要

農地を適切に活用し、次世代へつなぐためにも、ルールを理解し、正しい手続きを踏んでいきましょう!

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